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「~男性マンモグラフィー体験~」

「マンモグラフィー」は乳がんによる死亡率減少効果が証明されている唯一の検診方法です。 でも、日本人女性の乳がん検診普及率はまだまだ低く、問題視されています。

「マンモグラフィーはとても痛いときいている。」と言って検診を躊躇される方が多いこともその理由の一つではないかと思います。

マンモグラフィーの撮影を怖がる患者様に医療者が、「男性でも撮影することがありますので、大丈夫ですよ。」と励ます場面があります。 でも、マンモグラフィーの撮影経験のある男性は非常に少ないですし、本当にその男性が感じた痛みがご本人の許容範囲内であったかどうかは誰にもわかりません。

私は、もし「男性でもマンモグラフィーの痛みは許容範囲内である。」ということを証明してそのことを検診年齢の女性の皆様に知ってもらえれば、 乳がん検診普及の一助になるのではないかと考えました。そこで、10人の男性ボランティアの方々に実際にマンモグラフィーの圧迫を体験していただき、 皆様の痛みの度合いを検証させてもらいました。

ボランティアの平均年齢は42歳(27~61)、平均体重は70.9kg (53.5~94.2)、平均BMIは23.9kg /㎡(17.9~32.6)、 平均体脂肪率は20.4%(9.8~34.6)と様々でした。皆様それぞれに過去最大の痛みの体験をお聞きし、その痛みを10としたとき、 今回のマンモグラフィーの圧迫による痛みはどのくらいかを数字で答えていただきました。マンモグラフィーの圧は 80N(ニュートン)、100N、120Nと徐々に強くしていき、各々を検証しました。 (一般にマンモグラフィーの読影には100Nは圧をかけた方がよいと考えられています。)
私はレントゲン室から痛みによる男性の絶叫が聞こえてくるのではないかとヒヤヒヤしていましたが、 そんなことはありませんでした。痛みの平均は80Nで2.1(0.1~4)、100Nで3.0(0.1~6)、120Nで4.2(0.2~7)であり、 「思ったほど痛くなかった。」と感想をいただいた方が10人中6人でした。人生最大の痛みが「タンスの角で足の小指をぶつけたとき」 という程度の方でも、120Nのときの痛みは1.5で、「圧迫はむしろ心地よかったです。」と明るくコメントをいただきました。

当初私は「やせている人は太っている人より痛みが強いのではないか。」と仮説をたてていましたが、 体脂肪が9.8%のやせ形の方でも120Nの痛みは「3」であり、ご本人からは「細身の人でも心配なく検査できそうですね!」と爽やかにコメントをいただきました。

そのような声を聞いていると、もしかしてマンモグラフィーは「男性でも大丈夫」なのではなく 「男性だから大丈夫」なのではないか!?と私はやや混乱しました。でも痛みが強かった、という方もいました。その方は体脂肪率12%で、 120Nで痛みは「7」と答えており、その方を圧迫した技師は、「皮膚が硬めで引き出しにくかった。」との感想でした。

被験者が少ないのではっきりとしたことはいえませんが、男性の場合は「脂肪が少ないだけでなく皮膚が硬い人は痛みが強くでるけれど、 脂肪が少なくても皮膚が伸びる人は引っ張ったり押さえたりしても意外と痛みが少いのではないか。」ということが考えられました。

そして一番肝心なことです。今回の検証で感じたことですが、「マンモグラフィーは男性でもさほど強い痛みはない。」 ということが言えたとしても、「男性が痛くないなら女性はぜったい痛くない。」とは決して言えないのではないか、と思いました。

女性のもつ「乳腺組織」が圧迫される痛みは、単に脂肪や皮膚が圧迫されるときの痛みより強いのではないか、と思われます。また、 女性の撮影では乳腺が欠けた写真にならないように技師が被験者の乳腺の後隙を触知しながらしっかりと引き出していることを考えると、 乳房の引き出しのときの痛みは男性の場合に比べてやや強いのかもしれない、 とも思いました。ひょっとしたらマンモグラフィーは男性よりむしろ女性の方が痛いのではないか?だとしたら今回の結果は女性の皆様の安心には全く繋がらず、 検診普及率の向上には至らない、という残念な結果になってしまいます。
ああ、これではいけません(~_~;)

皆様が安心して検査を受けてくださるよう、今後もマンモグラフィーと痛みの関連については研究していこうと思います。

今回の検証の結果はさておき、乳がん死亡率減少効果が証明されている唯一の検診方法はマンモグラフィーです!
痛みは長くは続かず、検査が終わればすぐに消失します。

検診年齢だけど一度も検査をしたことがない、という方は、どうか一度マンモグラフィー検診を受けてください。m(_ _)m 最後に、ボランティアの男性の皆様、本当にありがとうございました

2021年 1月27日 大西 桜

「お胸の症状でお悩みの男性の皆様へ」

男性にも少ないながら乳腺組織が存在しますので、乳がんを発症することがあります。 男性の乳がんは女性もあわせた全乳がんの1%以下とごくまれですが、胸にしこりを感じたときには一度受診をしていただくことをおすすめします。
また、男性に比較的多くみられる症状で「女性化乳房症」というものがあります。女性化乳房症は生理的(年齢変化によるもの)や、 特発性(原因不明)のものが大半を占めます。ただし、普段内服している薬剤によるものや、他の疾患が原因の場合(肝硬変、 性腺機能低下、乳がん以外の腫瘍、甲状腺機能亢進症など)によることもあります。その場合は可能な範囲で薬剤を中止したり、 原因となる疾患を治療する必要があります。診察では、問診、視触診、超音波検査、必要に応じて採血をします。

当クリニックは「乳腺クリニック」ということから患者様の大半は女性ですが、女性専用というわけではありません。 男性の方も受診可能です。
ただし、女性の患者様で検査服にお着替えをされている方が多くいらっしゃるときは、前もってお声かけをさせていただき、 スタッフ専用通路から診察室へご案内させていただくことがあります。何とぞご了承ください。

お胸の症状でお悩みをもつのは女性だけではありません。
男性の方には「受診しづらいなあ...」と思われがちな診療科ですが、悩むよりまず受診をしてみてください。お待ちしています。

2020年 8月17日 大西 桜